急性期病院における
SPD業務の一部ロボット化計画案
人手不足の中、医療材料・医薬品物流(SPD)業務の効率化と持続可能な運営体制の構築を目指し、最新のロボット技術を活用した新たな取り組みが急務となっています。人材確保が困難な現状を踏まえ、国の医療DX推進政策に沿った先進的なアプローチで、医療現場の課題解決に取り組みが必要です。
製造元 QBIT ROBOTICS
現状と課題:ある病院のSPD業務の現状分析
施設概要
当院は高度な医療提供と研究・教育活動を担っています。10年以上前から院内の医療材料・医薬品物流(SPD)業務を外部委託しており、現在は25人規模の体制で運営されています。
最適な医療経営の実現、地域医療への貢献を果たすため、常に最先端の取り組みを模索しています。現在のSPD業務委託契約は年間約1億円の規模となっています。
直面する課題
  • 委託業者側の人員確保が困難になっている
  • 病院側の医療DX推進ニーズが高まっている
  • 薬剤・緊急搬送・夜間配送など新たなニーズが増加
  • 従来の人力による配送だけでは解決できない業務が増加
さらに、経済産業省・厚生労働省による医療DX・ロボット導入の補助金制度や推進政策が進められており、国立大学病院としてこれらの動向に対応することが求められています。
提案の方向性:SPD業務の一部ロボット化
病院が目指す方向性は、「SPD業務の一部(2〜3人分)をロボット化に置き換え、次回入札仕様書にその要件を組み込む」というものです。この提案は、単なる人員削減ではなく、人手不足を補完しながら医療DXを推進する建設的なアプローチとして評価されています。
人手不足への対応
単純な人員削減ではなく、「不足分をロボットで補完する」という建設的な提案です。人材確保が困難な現状において、ロボット技術の活用は持続可能な運営体制の構築に貢献します。
国の方針との整合性
経済産業省・厚生労働省が推進する医療DX政策や補助金制度を活用しやすい提案となっています。国の政策方針に沿った取り組みは、補助金獲得の可能性を高めるとともに、地域中核病院としての責務を果たすことにもつながります。
長期的コスト最適化
ロボット導入により、将来的な人件費上昇リスクを抑制することが可能です。初期投資は必要ですが、補助金活用と人件費削減効果により、中長期的には大幅なコスト削減が見込まれます。
先進性のアピール
地域急性期中核病院としてのモデル事例となり、全国展開可能な取り組みとなります。医療現場におけるDX推進の先駆的事例として、学術的価値も高い取り組みを目指す
仕様書に盛り込むべき考え方
次回SPD入札時の仕様書には、以下の要素を盛り込むことが重要です。これらの要件は、持続可能な院内物流体制の構築と医療DX推進を両立させるための基本方針となります。
01
目的と方針
院内物流の安定性・効率化・省人化を目的とし、DX・ロボット技術を活用することを明確に示します。国の医療DX政策や補助金活用を前提に、持続可能な運営体制を構築することを基本方針とします。
02
ロボット導入必須要件
搬送ロボットや自動搬送システムを活用し、日中および夜間の医薬品・医療材料配送を一部自動化することを必須要件とします。具体的な性能要件や安全基準も明記します。
03
省人化計画
現行人員のうち2〜3人分をロボット運用で代替し、運用実績や稼働データを病院へ月次報告することを求めます。段階的な導入計画と効果測定方法も明確にします。
04
緊急対応
緊急搬送・夜間配送対応をロボットと人員のハイブリッド体制で行うことを要件とします。災害時や非常時の対応計画も含めます。
05
DX連携
病院の医療情報システム(電子カルテ、SPD在庫管理システム等)と連携可能であることを要件とします。データ連携の仕様や情報セキュリティ要件も明記します。
06
教育・研究協力
国立大学病院としての研究・教育活動に協力することを要件とします。運用データ提供や実証実験への協力体制を求めます。
SPD業務委託 入札仕様書(案)
総則
本仕様書は、本院における医療材料・医薬品等の院内物流業務(以下「SPD業務」)を委託するにあたり、安定性・効率性・省人化・医療DXの推進を目的として必要な要件を定めるものです。
背景
本院は最先端の医療提供とともに、医療経営の最適化が必須になっています。少子高齢化に伴い、物流人材の確保が困難になっており、従来の人的運用のみでは業務継続が困難です。経済産業省・厚生労働省による医療DX推進・ロボット導入支援政策が進められており、院内物流への自動化技術導入は喫緊の課題となっています。
委託業務の範囲とロボット導入要件
委託業務の範囲
  • 医療材料・医薬品の院内搬送(定時・臨時・緊急)
  • SPD倉庫管理・在庫補充業務
  • 消費データの収集・報告
  • 夜間・休日を含む緊急搬送対応
  • 医療情報システム・SPD在庫管理システムとの連携運用
  • ロボット等自動化機器の導入および運用
  • 病院の研究・教育活動への協力(運用データ提供、実証実験対応)
ロボット導入および省人化要件
受託者は、現行業務における人員のうち2〜3人分の業務を搬送ロボット等の自動化技術により代替し、省人化を実現することが求められます。ロボットは日中・夜間を問わず稼働可能で、緊急搬送を含む柔軟な運用が可能であることが必要です。
ロボット運用と人員運用を組み合わせたハイブリッド体制を構築し、ロボットの運用実績(稼働時間・搬送件数・省人化効果等)を月次で本院に報告することが求められます。また、病院の電子カルテ・SPD在庫管理システムと連携し、出庫・搬送・補充が自動記録される仕組みを構築する必要があります。
DX連携・緊急時対応・契約条件
DX連携・補助金活用
受託者は、国・自治体等の補助金を活用したコスト最適化提案を行うことが求められます。医療DX推進に資する新技術(AIルート最適化、RFID・QRコード管理、温度・湿度センサー等)を積極的に導入し、新規技術導入に関する効果検証および学術発表を病院と共同で実施できる体制を整えることが必要です。
緊急時対応
夜間・休日においても医薬品・医療材料の緊急搬送を確実に行える体制を保持することが求められます。災害・停電等の非常時には、手動運用への切替手順を整備し、定期的に訓練を行うことが必要です。
人員配置
受託者は、日常運用に必要な人員数を確保することが求められます(ロボット導入分を除く)。また、全従事者に対し、本院が定める感染管理・院内規則に基づく教育訓練を実施する必要があります。
報告・評価
月次報告には、搬送件数、ロボット稼働実績、省人化効果、在庫精度、納期遵守率、DX化による業務改善効果などを含めることが求められます。年1回、本院との合同評価会議を行い、改善策を協議することも必要です。
契約条件
契約期間は原則3年間(更新可能)とします。年間委託料は提案額とし、ロボット導入・補助金活用を前提にコスト最適化を図ることが求められます。本仕様書の要件を満たすことを入札条件とします。
研究協力
受託者は、本院の研究目的に応じ、ロボット運用データやDX導入効果に関する情報提供を行うことが求められます。学会発表や論文作成等への協力も必要です。

参考資料: 医療DX推進ガイドライン(厚労省)、医療分野におけるロボット・自動化導入事例集(経産省)、国立大学病院協会 医療物流標準化報告書などが活用できます。
ロボット導入シミュレーション
前提条件
病院規模
  • 病床数:1,200床
  • 総延床面積:80,000〜100,000㎡
SPD委託人員
  • 総人員:25名
  • うち病棟・薬剤搬送従事者:15名
人件費
  • 1名あたり年間:500万円(委託料換算)
搬送ルート
  • 病棟定時搬送(医療材料・医薬品)
  • 手術室・中央材料部搬送
  • 薬剤部夜間搬送(緊急処方)
搬送ロボット仕様
  • 積載量:30〜50kg
  • 速度:4〜5km/h
  • 稼働時間:連続8時間(充電1時間)
  • エレベーター連携可
  • 病棟間・薬剤部間の自律走行可
搬送ルート・台数・削減効果
年間コスト効果(ロボット耐用5年)
2,500万円
人件費削減効果
5人 × 500万円 = 年間 2,500万円削減
600万円
ロボット導入コスト
5台 × 600万円 = 3,000万円(5年償却:年間600万円)
1,900万円
年間純効果
2,500万円 − 600万円 = 1,900万円/年の削減効果
副次効果
  • 夜間搬送の安定化
  • 人員確保難の緩和
  • 緊急搬送の即応性向上
補助金活用試算とROI
想定補助金制度
経済産業省:ロボット導入実証補助金(医療DX推進枠)
補助率 1/2(上限1億円)
厚生労働省:医療提供体制効率化事業
補助率 1/3(ロボット導入可)
試算
補助金活用後のROI試算
1
初期投資(補助金適用後)
1,800万円
2
年間効果
人件費削減 2,500万円 − ロボ保守費 200万円 = 年間 2,300万円
3
投資回収期間
1,800 ÷ 2,300 ≈ 0.78年(約9ヶ月)で回収
4
耐用年数5年総効果
2,300 × 5 = 1億1,500万円の純効果
この試算結果から、補助金を活用することで初期投資を半減させ、約9ヶ月という短期間で投資回収が可能であることが分かります。5年間の耐用期間では1億円を超える純効果が見込まれ、経済的にも非常に有効な投資であると言えます。
また、人件費削減だけでなく、夜間搬送の安定化や緊急搬送の即応性向上など、金銭的価値に換算できない副次的効果も大きいと考えられます。国立大学病院としての先進的取り組みという観点からも、社会的・学術的価値は高いと評価できます。
次のステップ:実施計画
院内の搬送ルートマップ作成
ロボット導入に先立ち、院内の搬送ルートを詳細に分析し、距離・時間を計測します。これにより、ロボットの最適配置と運用計画を策定します。
デモ運用・トライアル実施
SPD業者・ロボットメーカーを交えて、1週間程度のデモ運用・トライアルを実施します。実際の病院環境での動作検証と課題抽出を行います。
補助金申請準備
効果試算を含む事業計画書を作成し、補助金申請の準備を進めます。経済産業省・厚生労働省の補助金申請スケジュールに合わせて準備を進めることが重要です。
入札仕様書の最終化
トライアル結果や補助金申請状況を踏まえ、入札仕様書を最終化します。法務部門・契約部門との調整を行い、法的整合性を確保します。
入札実施・業者選定
入札を実施し、最適な業者を選定します。ロボット導入実績や補助金活用実績なども評価基準に含めることが重要です。
これらのステップを着実に進めることで、国立大学病院としての先進的な取り組みを実現し、持続可能な院内物流体制の構築と医療DX推進を両立させることが可能となります。また、この取り組みは他の医療機関のモデルケースとなり、医療現場全体の効率化・最適化に貢献することが期待されます。

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